Prologue 〜プロローグ〜
1.オレがキミの守護者になる


【ハルト】
「キョウヤー!キョウちゃーん!」

幼なじみの名前を呼ぶ。
このところ学校を休んでいたキョウヤの家に、授業のプリントを届けにきたのだ。


【ハルト】
「あれ、いないのかな。キョウ…」

ガチャ

もう一度呼ぼうとすると、ドアが開いた。


【キョウヤ】
「…何?」


【ハルト】
「あっ、キョウちゃん! ガッコのプリント持って来たよ! 結構たまってるよ〜ほら!」


【キョウヤ】
「あ、そ。その辺置いといて。俺、忙しいから」

思いがけず素気ないキョウヤの態度に動揺したが、部屋に戻ろうとするキョウヤに慌てて話しかける。


【ハルト】
「え、あ、あのさっ、最近学校来てないけど、どうしたんだよ。風邪?」


【キョウヤ】
「どうして? 学校なんて意味ないから行かないだけ。悪い?」


【ハルト】
「意味ないって…、何言ってんだよ。テストも近いし、クラスのみんなも心配して…」


【キョウヤ】
「興味ない」


【ハルト】
「え…」

一瞬、空気が凍りつく。


【キョウヤ】
「授業も、クラスメイトも。ビジネスに役立たない連中なんて、興味ないね」

吐き捨てるようにキョウヤが言う。


【ハルト】
「ちょ、おまえどうしたんだよ!?」

自分の耳を疑う様な親友の言葉に、オレは思わず声を荒げた。


【キョウヤ】
「お前もだよ。じゃ、俺は投資の途中だから、邪魔するなよな」


【ハルト】
「オレも…? 何だよ、それ!!なあっ!キョウヤっ!!」

言い終わらないうちに、バタンと重たい音を残し、ドアが閉まった。


【ハルト】
「おい!待てよ!! キョウヤ!!開けろよ、何かあったのかっ!?」

何度も、ドアを叩く。
中からの反応はない。

急に人が変わってしまったかのようなキョウヤが信じられず、オレは名前を呼び続けた。


【ハルト】
「どうしちゃったんだよ!!キョウヤ、キョウヤーー!!!」


・・・

・・・


☆ ハルトの部屋 ☆

【ハルト】
「キョウ…!!」

自分の声にハッとして、オレは目を覚ました。


「…夢、かよ」

起き上がり、じっとりとかいた嫌な汗を拭う。

まるで昨日の再現だ。
そう、キョウヤのことは夢ではない。
あの言葉のひとつひとつが現実なんだ。


(オレとか学校とか興味ないって、ビジネス?投資? 何だよそれ)


「…わけわかんね。」

重苦しい気分で、とりあえずパソコンを立ち上げる。


「キョウちゃん頭良いからなー、なんかそーゆーのはまってんのかなー」

気を紛らわすように独り言を言いながら、カチカチとこれといったあてもなくサイトを巡る。
こういうときは大抵面白い記事は見つからないものだ。


と。

ヴ…ン

「あれ…?」

突然、画面が乱れだした。


「なんだよー、調子悪いのか?」

モニターや本体をあちこち叩いてみる。
ほどなくして、元に戻った。

「お、直った。やっぱ、電化製品は叩くと直るんだよね〜v」

ゴン!


「…ゴン!?」

机の天板に内側から何かぶつかった物音に、オレは思わず立ち上がった。
一歩、二歩と静かに後ずさりする。

(い、いまの引き出しだよな…? 何か…いるの…!?)

恐るおそる近づいて、手を掛けたときだった。


ガシャァー!!


「!!!!!???」

いきなり勢いよく引き出しが開き、その直後、なぜか若い男と顔をつき合わせた。
訳が分からず、言葉が出てこない。

「なっ、あ、あ…」

【青年】
「パソコン叩いちゃダメだよ? データ消えちゃったらどうするの。驚かせないでほしいな」

どっちがだ!と思いながらも口をパクパクさせたまま固まっているオレに、これがそいつの第一声。

引き出しから上半身だけ出したまま部屋をぐるりと見渡して、笑顔でオレに問いかける。


【青年】
「キミ、だれ?」


【ハルト】
「〜っ、あんたが誰だよ!!???」

つっこんでようやく声になったが、お構いなしといった様子で彼は続ける。


【青年】
「あのさ」


【ハルト】
「な、何っ!?」

【青年】
「顔、近いんだけど…」


彼の指先がオレの頬に触れる。
気が動転して気付かなかったが、色白で女性みたいに美形なそいつの顔に、鼻先や口唇にいまにも触れそうなくらい近い。


【青年】
「ちゅーしちゃおっかな」

そう言って、いたずらっぽく顔を近づけてくる。


【ハルト】
「はわぁぁああ!!」

オレは、ぼっと顔に血がのぼるのを感じて慌てて飛びのいた。


【青年】
「あっはは!かわいいね〜キミ」

お腹をかかえて笑いながら、引き出しから出てくるそいつ。


【ハルト】
(な、何なんだよ〜こいつ!!?いきなりチューしちゃおうとかありえねえ!! ってか…)

「土足だしっ!!(ガビーン)…じゃない。あんた、なんでそんなとこいるんだよ!?どうやって入ったんだよ!??」


【青年】
「入ったんじゃなくて、出てきたんだよ? オレのいる世界とこっちの世界をつなげたの。アドレスは合ってるから間違いないと思うんだけど」


【ハルト】
「はぁ!?何言ってんだ。 ばっ、バカにしてんのか!ドラ○もんじゃあるまいし、そんな…」


【青年】
「ド○えもんじゃない! 失礼な。不恰好な2頭身タヌキとこの美しいオレがどうして同じに見える」


【ハルト】
「うわ、ナルだよ…ってか、伏字ずらすなよ!言いすぎだから!プロローグでいきなりクレームになるから!」


【青年】
「それでね」

【ハルト】
(スルーか!!!)

【青年】
「キミにネット界を救ってほしいんだ」

そう言った彼の瞳が、じっとオレを見つめる。
マジで言ってるのかそれとも冗談なのか、表情からはさっぱり読み取れない。


【ハルト】
「は、ネット界…を、救う? なに言って…」

【青年】
「心配しなくてもいいよ。オレがキミの守護者になる」

【ハルト】
「なっ…」

無茶苦茶な、でもちょっと魅惑的な響きに、一瞬戸惑う。

【青年】
「リン、いるんだろう。誓約書を」

【レフェリー リン】(以下リン)
「はい、こちらに」

ピョンと、引き出しから飛び出てきたのは、子供より2まわりくらいは小さい女の子。

【ハルト】
(今度はちっちゃいのキターー!!)

明らかに人間のサイズではない。
それに。

(えっ、飛んでる…!!!?)

確かに飛んでいる。浮いている、というのが正しいのかもしれない。

いきなり机から出てきた青年と、浮遊する妖精みたいな女の子。
とてもじゃないが理解できない状況に、オレはたまらず部屋を飛び出した。


【青年】
「さ、ここに名前書いてね。内容は暗号化して転送されるから心配な…、あれ?」

【リン】
「…逃げましたね」

キィキィ、と音をたてながら部屋のドアがゆれている。


【青年】
「まいったなぁ。部屋の外は範囲外なんだけど」


【リン】
「くれぐれも規約に反する行為はなさいませんよう」


【青年】
「カワイイ顔して厳しいよね〜、そーゆーとこ」


【リン】
「監査委の義務ですから。あなた様でも例外というわけには」


【青年】
「はいはい。とりあえず、オレは様子みてくるよ」

そう言って、青年は再び引き出しに飛び込んだ。


【リン】
「……お気をつけて」



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